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■ オジーの東京ブラツ記0034 『東京都美術館』2020. 5.19

『東京都美術館』

 東京都美術館は上野公園内に在り、色々な企画展や様々な分野の全国公募展などを開催しています。 上野公園内には他にも国立西洋美術館、上野の森美術館、東京芸術大学美術館、そして東京国立博物館と有名な立派な美術館が在ります。 上野公園内外には他にも多くの美術品を展示している記念館などが在ります。 「上野は芸術と文化のまち」などと浅草の芸人が笑いのネタにするくらい多く、博物館、美術館、記念館、資料館と枚挙に暇がありません。
 
 東京都美術館には、全国公募展の日本画院展を観に行きます。 全国の日本画の中堅若手の試作発表場として79回と歴史の有る展覧会です。 私は5年くらい前から、年に300点以上も有る応募作品を観て、何時も感動して心を癒されました。 招待してくれた人も、得意満面に創作過程などを説明しながら、一番の大作ではないかと思わせるような力作を出品されていました。

 私自身も絵を描くことが大好きで、子供の頃から図工、美術の授業が大好きでした。 残雪の残る遠くの山々が遠景に在り、堤防に架かる橋や土手の桜並木、そして菜の花、スイセン等と川のせせらぎが近景に在る。 そんな春の「風景画」は私の憧れの構図でした。 
 
 小学生の頃は季節ごとの校外写生会があって、それは遠足気分もあり最高の楽しみでした。 3〜4年生頃の、近くの名勝渓谷での写生会は特に楽しい思い出です。 燃えるように紅く色づいた渓谷で、深しんとした水面と磊々とした大岩の壁と、天に抜けるような青空に感動しました。 そして絵心は大いに膨らみ、想う存分に描いていました。 
 
 人物画も好きで、妹が机に座って何気なく頬杖を突いていた絵は、学校の長廊下の鴨居の上に長いこと架けられていました。 5年生の時に絵の得意な女の先生が担任となり、花や花瓶などの静物画を多く描かされ、よく褒めてもらいました。 私も直ぐに有頂天になる性格なので、益々絵を描くことが好きになりました。 

 6年生になった時は男の先生が担任になり、最初の頃の図工の時間に花の静物画を描かされました。 ところが、先生は描き進んでいる私の側に来て、「葉っぱの色が違うよ!葉っぱは茶色じゃなくて緑だよ!」と注意しました。 私は返答に困って消沈して居ました。 周りの子たちが見兼ねてか「先生!いいんだよ!絵がうまいんだから、大丈夫だよ!」と庇っていました。 その頃、私は解りませんでしたが、中学生の時に解ったのです。 それは色の識別力が弱い「色弱」という事だったのです。 

 人間の目には赤、緑、青の色を感じる細胞があり、色を見分けています。 この細胞がうまく働かない人は、色を見分けることが難しくなります。 これを「色弱」と呼んでいます。 色弱では他の多くの人に比べて違う色に見えます、赤と緑、黄色と黄緑など、決まった色の見分けがつきにくくなります。 赤色を感じる細胞がうまく働かないことをP型色弱、緑色を感じる細胞がうまく働かないことをD型色弱といいます。 私の場合は先天性色覚異常ということなので、症状としては特別な色の区別がつき難いのです。 主に茶と緑、ピンクと灰色又は水色などの白系、橙色と黄緑です。 私は緑に敏感な視細胞の機能に異常があるので『2型色覚異常』なのです。 この『色弱=色覚異常』は男性の20人に一人、女性の500人に一人くらい居るそうです。 
 
 この事は高校受験の時にも大きな障害となり、大袈裟に言えば人生のターニングポイントにもなりました。 実際の生活には殆ど影響は無く、偶に見分け難い色の時は目を凝らせば充分なのです。 私は何故かこのような先天性心身疾患の類が多く付き纏う、面倒な自分自身でした。 なので『私の先天性の数々』なるエッセイも書けるかも知れません。  
  
 絵の話に戻りまして、中学時代も図画工作や美術を楽しく学んでいました。 高校に入り、文化祭の時に美術部の展覧会にオープン出展しました。 その頃は油絵に興味を持つようになり、「独断と偏見、見様見真似」で静物画を一所懸命に描いていました。 その内の一枚を出品して、何故か「奨励賞」を頂いたのです。 審査の先生は、以前にも書いたユニークな先生で美術部も掛け持ちしていたのです。 その先生は「なかなか好い絵だ、これからも頑張って続けて描いて下さい」と当に奨励してくれました。 
 
 その展覧会に美術部員の描いた、私が初めて見た岩絵の具の日本画の大作が展示されました。 私は驚きました、それまでの風景画の構想に対する私のイメージとは違っていたからです。 一畳ほどの大きなキャンバスに山、空、裾野が雄大に描かれていました。 全体の色合いは重厚感に溢れ、柔らかに流れるような稜線と、硬い岩絵の具を使っているのに真綿の様な感覚が醸し出されていました。 岩絵の具は、主に鉱石を砕いて作った粒子状の砂で出来ています。 この絵の具そのものには接着性がなく膠液(にかわえき)を加えて支持体に接着します。 光を反射しない艶のない質感が特徴的です。 ですが、現在は人工材料や光を発光するような岩絵の具も有り、多岐にわたっているようです。 

 私は高校一年生でこの様な絵を描く人が居るのかと感動してしまいました。 この時から、ハッキリ私は心に決めました、もう絵は描かない、観るだけにすると。 それからは趣味で時々花などの静物画を描いて、兄弟や友達に上げていましたが、やがてそれも大人になるにつれ全く描かなくなりました。 今は専ら名画の鑑賞や、好きな画風の画家たちの展示会や展覧会に興味を持って鑑賞しています。 又、東京には東京都美術館の他にも、全国一般公募の展覧会が数多く開かれていますので、出来るだけ足を運んで楽しみたいと思っています。