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■ オジーの東京ブラツ記0032 『月下の美人』2019.10.22

『月下の美人』

 
月下美人の花は、「夜に咲き、翌朝には萎んでしまう」「満月や新月の夜に咲く」
「甘く心地良い、優雅な香りがする」 又、年に一度しか咲かないと云われて、神秘的なイメージで愛されている花です。 故に名前の由来の俗説や、学問的な分類や生育法などが色々と語られています。

 私は月下美人に魅せられ、直に鑑賞したいと思い、東京のマンションで5年前、2014年9月から育て始めました。 下町の何時も通る路地の鉢植えのお宅から、お願いして葉を一枚頂き挿し木しました。

 月下美人はサボテン科・クジャクサボテン属に分類され、自生地では老樹や朽木、腐葉土に着生し、肉厚の葉や茎が1〜2m程に成長すると花を咲かせるそうです。 日本では6〜11月に花を咲かせることが多く、年に一回しか咲かないとも云われていますが、株が成長し生育しやすい環境であれば、年に3〜4回は咲くそうです。 又、一度も咲かないこともあるそうです。 イメージでは満月の夜に月に迎合して咲く美しい花ですが、月下美人は月の満ち欠けに連動して花を咲かせる習性は持っていないそうです。 そうでしょうか?

 次の年2015年は、昨年挿し木した葉が青々と順調に成長し、先ずは立派な株立ちに成功しました。 何時の日かきっと咲くと信じて楽しみに育てました。 
 
 1年が経ち、2016年の9月の初め頃に花芽が生ってどんどん大きくなりました。 嬉しさの余り、無知から大切にしなければと思い込み、部屋に取り込んでしまいました。 中々咲かないので落胆して、再びベランダに出しました。 何日か経ったら気付かないうちに萎んで終わった様子でした。 それでその年の観賞は大失敗に終わりました。

 2017年8月下旬の開花は、蕾が充分に膨らみ、昨年の失敗の経験から推測して、今夜が勝負時と決め込み、ここぞとばかりに部屋に持ち込みました。 ベランダから部屋に入れると更に強い香りが漂い、ジャスミンに似たやわらかい香りが部屋いっぱいに広がりました。 一年に一回数時間しかない受粉チャンスの開花時に、暗闇でも目立つ純白色と強力な甘い香りによって、受粉を助ける蝙蝠を引き寄せるのだそうです。 9月下旬は二度目の開花で共に二輪ずつ満開と生り、私を多いに楽しませてくれました。 

 2018年は9月上旬に最初の開花で、2度目は10月上旬で、共に一輪の開花でした。 私の限りない美への欲望からすると少し寂しい思いでした。 そこでもっと株を増やそうと思い、葉や枝を剪定して切り揃え10本余り挿し木しました。 「単身赴任の身で、しかも終活中なのだから、植物の鉢は増やさないで」と、妻に固く念を押されていましたが、禁断の欲望は抑えられません。 今年はその挿し木した葉茎は全部、青々と元気に育っています。 これから何度か株分け植え替えをして、花の咲く鉢植えに仕上げていきます。 開花期数も3〜4回に、花数も5〜6個に生る様に育てます。 私の予想では2年後2021年の、中秋の名月の頃には咲くだろうと確信しています。 

 2019年の9月中旬は二輪開花しました。 と言っても、私はその時の開花は出掛けていて立ち会えませんでした。 お隣の旦那さんに満開の状況を聞かされて満足しました。 10月の中旬に2度目の開花が有り、二輪の満開の花を楽しみました。 近頃は花芽の芽生えから、蕾の膨らみ具合や咲き出す直前の兆候まで、解る様になりました。 その兆候と強烈な香りで、今夜は咲くと断定出来る様になりました。

 月下美人の魅力に憑りつかれ、開花のメカニズムにも興味が湧いてきました。 
開花は月の満ち欠けに関係無いと言われていますが、月に連動する習性を持つ体内時計を備えているのではないだろうか?と私は密かに思っています。 旧暦(月齢)の馴染はどんどん疎くなっていますが、28日でひと月とされています。 花芽を付けそうな葉茎を観察するに、葉脈の端に米粒よりも小さい芽が幾つか生えてくる。 更に追って観察するに中々花芽の形にならないが、4分のひと月位で1〜2個、1センチ位の花芽の形となる。 そこから、2分のひと月位でどんどん成長して垂れ下がり、やがて花茎が反り上がる。 残りの4分のひと月で大きく膨らんで色付きます。 直前に花びらが開き始め、強烈な甘い香りと共に静かに音を立てる様に満開に生ります。 花の美しさと儚さを秘め、優雅で上品そのものです。 この満開ショーは4〜5時間位で、一年間の中のたった一刻だけのこの世の花です。
 
 今年の満開は9月13日(金)中秋の名月でした。 そして続いての満開は10月11日(金)十三夜でした。 古来より謳われる、名月に咲く月下美人は単なる偶然なのでしょうか? 私は満月に咲く月下美人が好きなのです。 いつの日か中秋の名月に恋する月下の美人を映像にしたいですね。