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■ オジーの東京ブラツ記0017 『不忍が池』2014.03.22

『不忍池』

 不忍池は上野駅界隈の直ぐ近くだから何かと機会を見ては散歩に行きます。
桜の季節は、並木の枝が迫り出し水面に花影を映します。 そしてやがて花筏となって、池一杯に春風と共に漂うのです。 夏の季節は、蓮が立錐の余地も無いくらい、葉を広げて緑の水面となります。 やがて夏の盛に花を開き、一斉に咲き出す蓮華は、逝った事は無いが極楽浄土の風情を感じさせます。 蓮華は夜明けに音を立てて開くと聞いていますが、夜明け前に寝る私は未だその音は体験していません。
 
 先日は蓮もすっかり立ち枯れて、諸行無常を感じさせる佇まいになって居る不忍池に行ってきました。 上野公園内の道すがら不図カラスを見掛け、都会の鳥を徒然に観察しました。 そのカラス達は、もっと高い樹が在るのに人間の手が届きそうな低い枝に羽を休めて居るのです。 警戒心の強い賢い鳥と謂われるカラスが、其処此処にまるで無防備の様子で佇んで居るのです。 其の辺りを、これも又まるで無関心な人間達が往来して居るのです。 カラスと人間が、暗黙の裡に共存の平和条約を結んで居るのでしょうか。
 
 池の畔のカフェテラスで休んで居たら、隣のテーブルで食事して居た家族が居ました。 アメリカ人のパパと日本人のハーフの男の子二人とが、ピクニックの様な食事をして居た。 其処に鳩が数羽舞い降りて来て、パンやお菓子の食べ残しを啄ばむ、更に数羽降り立ち餌の奪い合いから威嚇行為の喧騒となる。 餌を強請ってテーブルの上まで跳ね回り、子供たちはギヤーギヤー慄きながら、半分面白がってフライドポテトを投げ与えて居た。 パパは下手な日本語を交え微笑みながら、周りにも愛嬌をふりまいていた、「この子たちは日本語も話すのですよ」などとね。 その合間に雀も居たが、鳩やカラスや名も知らぬ渡り鳥(多分、不北帰行)、それにカモメの襲来に蹴散らされて居た。 そんな不忍池の雀に驚いた事があった。

 雀の餌付けを初めて見た。 野鳥の雀たちが掌に、十羽も二十羽も群がり降りてきて餌を啄ばむのです。 雀と人間のスキンシップ、これには吃驚して感動してしまいました。 それは近所のお爺さんが毎日、雀の為に屑米やパン屑や雑穀類を持って来て掌で与えて居るからです。 その光景を微笑ましく思い、私も早速に遣らせて貰いました。 直接触れる羽の柔らかさ、ふぁっとした意外に軽い体重、啄ばむ嘴のテンポの良いリズムは単身赴任の私には心地良い響きでした。 昔ガキの頃庭に来る雀を捕りたいと、笊と竹棒と縄で仕掛けた罠に米粒を撒いて、物陰に隠れて待っていた。 一度も捕った事が有りません、大人たちに「お前に捕られるようなバカな雀は居ないよ」と嗤われた。 先日もテニス場に雀が舞い降り足元でパン屑を啄ばんでいた、都会の雀は何故そんなに人を怖がらないのだろうか、田舎の雀は相変わらず警戒心が強く忙しなく首を振りながら飛び回って居るのだろうか。

 不忍池を見下ろす小高い上野の丘に洋食屋「精養軒」が観えて居ました。 又の季節に今度はあのレストランのテラスで、美味しいブランチをいただきながら美しい風景を楽しもうと決めました。